東京大学大学院総合文化研究科 広域科学専攻・生命環境科学系/広域システム科学系
佐藤直樹研究室
シアノバクテリアのゲノム解析,細胞分化,渦巻き形成
当研究室では,シアノバクテリアについての様々な研究を行っています。
1980年代,佐藤が大学院生だった頃には,Anabaenaの低温適応の一つとして,膜脂質脂肪酸が低温で不飽和化されることを研究していました。シアノバクテリアにおける脂質合成系,脂質分子種合成系などを明らかにしました。13Cを用いたラベル実験により,脂質結合型不飽和化をin vivoで証明しました。
1990年代には,低温誘導性のRNA結合タンパク質について詳しく調べました。1995年の論文。低温誘導のしくみには,5'非翻訳領域が関わっています。
やはり低温で誘導される鉄を結合しDNAにも結合するとされるDPSタンパク質についても詳しく調べました。これについては,遅ればせながら,もうすぐ論文をいくつか出します。
2000年以降,Anabaenaが窒素飢餓において形成するヘテロシスト(左上の図)について,マイクロアレイ解析によって,ゲノム全体にわたる遺伝子発現の変化を調べました。また,ヘテロシストに分化する細胞が,どのタイミングで決まっているのかを経時観察によって調べ,窒素源がある状態でも,将来,ヘテロシストになる細胞が選択されていること,それは,2回の細胞分裂でできる4細胞群の両端細胞であることを突き止めました。
多数のシアノバクテリアのゲノム配列が決められていますが,それらを相互に比較したり,植物・藻類のゲノム内容と比較することにより,シアノバクテリアから細胞内共生によって,藻類・植物の葉緑体(論文2003, 2001)に持ち込まれた遺伝子をすべて発見することができます。このゲノム比較のために開発したのが,Gclustソフトウェアで,GclustとCyanoClustの二つのサーバーで,データを公開しています。ゲノム相互間のシンテニー解析の新たな方法を開発しました。
シアノバクテリアのなかで最初にゲノムが決められたSynechocystis sp. PCC 6803(中央の二つの図:明視野像とDAPI蛍光像)について,再解析を行い,20か所の訂正を行うとともに,各研究室で保存されている株の相互の違いを明らかにしました。その際,N末端の不揃いを解析する方法を開発しました。
スピルリナArthrospiraのゲノム,Anabaena sp. PCC 7120のアノテーション,などにも協力しました。
現在も,渦巻き(右上の図)を作るPhormidiumなど,いくつかのシアノバクテリアのゲノム配列を,新型シーケンサを用いて解読しています。
研究のページに戻る