植物や藻類の細胞の中で光合成を行うのは,葉緑体ですが,根などの緑色ではない組織でも類似のオルガネラがあり,色素体(プラスチド)と呼ばれています。これらは,二重の包膜に囲まれ,特有のDNA(葉緑体ゲノム)をもっています。葉緑体は,シアノバクテリアが細胞内共生することによって生じたと考えられ,葉緑体ゲノムには,シアノバクテリアの遺伝子とよく似た遺伝子が含まれていますが,遺伝子の総数はずっと少なく,100個ないし200個程度の遺伝子を含むに過ぎません。しかし,それらの遺伝子は,葉緑体の機能にとって重要で,光合成装置の成分となるタンパク質の遺伝子も多数含まれています。また,葉緑体の遺伝子発現系(RNAポリメラーゼやリボソーム)の成分をコードする遺伝子も含まれています。
核様体構成タンパク質には,亜硫酸還元酵素が主要成分として含まれ,これは,葉緑体DNAを堅くパッキングし,転写活性を抑えています。
核様体を包膜につなぎ止めるタンパク質として,PENDタンパク質を発見しました。このタンパク質は,特殊な短い輸送配列を使って葉緑体の内膜に輸送され,葉緑体DNAと結合します。N末端付近に存在するDNA結合ドメインはbZIPと似た構造をもち,特定の配列に結合します。N末の短い配列を欠損させると,このタンパク質は核に輸送されることもわかりました。N末端部分の配列をGFP融合タンパク質と融合させたものをプローブとすると,色素体の核様体を可視化することができ,これにより,核様体のようすを生の植物体で観察できます。また,根や茎,種子などでも核様体を観察することができます。
このほか,RNAポリメラーゼやDNAポリメラーゼについての研究もしています。
包膜機能に関する総説(Biochimie 1999)
核様体の不連続進化(Trends in Plant Science 2001)
核様体の分子構築と進化(International Review of Cytology 2003)
エンドウ葉緑体の発達に伴う核様体動態(EMBO Journal 1993)
PENDタンパク質同定の論文(Plant Cell 1998)
PENDタンパク質のDNA結合特性(NAR 2001)
PEND-GFPによる核様体可視化(Plant Cell Physiol 2005)
PENDタンパク質の局在の詳細な解析(FEBS Journal 2009)
亜硫酸還元酵素が核様体の主要DNA結合タンパク質(FEBS Lett. 2001)
亜硫酸還元酵素による転写調節(JBC 2002)
(FEBS J. 2007)
シアニジオシゾンの亜硫酸還元酵素(Biochem J. 2009)
RNAポリメラーゼに関する2002年論文と2005年
研究のページに戻る