めぐりめぐむ生命(その1)
太陽の恵みをうけた生命のサイクル


  詳しい解説へのリンク
光合成のエントロピー論 (少し難しいかもしれません)
裳華房刊『エントロピーから読み解く生物学 めぐりめぐむ わきあがる生命』
いままで,生命とは何か,ということをテーマとして考えてきたが,ひと つのまとめかたとして,「めぐりめぐむ生命」という考え方を提案したい。

「めぐり」という言葉はかなり曖昧で,循環する,回転する,遍歴する,などという意味を含む。「めぐむ」というのも,相互に助け 合う,支え合う,恩恵を与える,愛情をもつ,など幅広い内容を包含している。このままではきわめて抽象的であるが,生命を,細胞から個体,種にまたがって しかも進化の歴史をふまえて表現するとすれば,これに優る表現を見いだすことは難しい。

 「めぐる」という言葉は,生命に関わるさまざまな現象が,究極的には循環からなることを表している。細胞レベルでは,代謝経路などがすぐに思い浮かぶ。 クエン酸回路,カルビン回路,など一回りしている代謝系は多い。合成と分解をあわせれば,たいていの物質の代謝は循環回路を成している。体を構成する物質 の新陳代謝あるいは代謝回転などという言葉は日常でも使われるくらい卑近な言葉であり,生命体の物質的な基盤がつねに老廃物の除去と新たな物質の補給のバ ランスで成り立っていることは誰もが知っている。代謝そのものではないが,酵素の働きもサイクルを成している。基質との結合,結合の付け替え,生成物の離 脱,を経てもとの酵素に戻るからである。光合成や呼吸の電子伝達も実は電子回路を構成していると考えることが出来る。細胞で考えれば,細胞分裂周期あるい は細胞周期がある。いまでこそ当たり前の概念であるが,細胞の分裂増殖をサイクルとして考え る考え方が普及したのは意外と新しい。研究室のトップページに置いた回るロゴは,代謝回転と細胞周期の共役を表した概念的イメージであるが,実際の共役の 状況は複雑なのはいうまでもない。また,この図では,太陽の光が系に流入し,熱として流出している様も表されている。光は熱に比べ,同じエネルギーでも自 由エネルギーが大きい(エントロピーが小さい)。従って,その変換の過程で,仕事をすることができ,それによって生命が成り立っている。
 


次に,光合成と呼吸の共役を見てみよう。
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Last update: May 25, 2012
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