生命の基本原理を解明するために,生命現象に潜む法則性を見つ
け出す(その4)
以上,いろいろな例を見ながら,これまでの生物学ではあまり対象とならな
かった生物の見方があることを説明しました。
人の病気を治す薬は個別の遺伝子や酵素の解析をしなければ作れません。農業生産を高める農薬や,肥料なども同じです。応用学問というのは,もともと個別の
知識に基づいていますし,必ずしも理論的必然性がなくても出来てしまえばそれでよいということもあります。
私たちは,生命の原理を理解したいと思います。それには,個別のタンパク質や遺伝子,物質などとは別の次元で,新しい考え方をすることが必要です。しか
し,理論だけで生命の原理を説明するといっている人たちは,「その人が生き物らしいと思うもの」をもって生物の代わりにしているように思えます。だから,
有名なライフゲームという,オセロゲームのようなパターンがステップごとに移動するのをみて,生き物のように見えるという研究者もいます。わからない方
は,Wikipediaなどで調べてみて下さい。いったいライフゲームのどこが生き物だと言うのでしょう。生命を理解するには,なまの生物をとことん観察
することが必要です。それなくしては何も考えることは出来ません。その上で,モデルを作りましょう。モデルがあれば数理的な計算が可能です。実測とあわせ
ることも可能です。
また,これまで研究の対象となってこなかったこともたくさんあります。生物の教科書は毎年分厚くなってゆき,もはや一人の教師では教えきれない内容になっ
ています。それを必死になって覚えようとする学生も学生ですが,一歩引き下がって,何か別のものの見方ができないか,考えてみようではありませんか。
一言だけ注意を述べておくと,いくらこのようにいっても,生物学を何も勉強しないで,一人で独自の理論が作れるわけもありません。一通りのことを勉強する
ことは必要です。先人が考えたことをベースにして,誰も考えないことを考えてみたいものです。
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更新日:December 24, 2008.
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