生命の基本原理を解明するために,生命現象に潜む法則性を見つ
け出す(その3)
生命現象の中に潜む法則性を見つけ出すとはどういうことでしょうか。
物理学や化学では,法則があるところには不変量があります。ある現象に関して何が不変量であるのか,ということが変化を記述する制限条件を成しています。
運動の法則では運動量やエネルギーの保存,電磁気学でも電気力線の保存などがあります。化学反応の記述でも,元素が保存されることが基本になります。生物
でも,遺伝学なら遺伝子が不変量ということになりますが,その実体は塩基レベルになってしまうと今ひとつ明確ではなく,進化では何が保存されるのか説明し
にくい点があります。
生命現象の法則性というと,まず,生命の共通性が思い浮かびます。
つまり,大腸菌でもヒトでも植物でも,生命体を造りあげている物質は基本的に同じであることから始まり,代謝経路の中心的な部分は共通であること,遺伝子
発現の基本的なしくみは共通だということなどがすぐに思いつきます。また,当然のことですが,酵素の反応機構も,系統関係において直系関係で結びつけられ
ている酵素(オルソログ)であれば,生物種によらず同じと考えてよいでしょう。一方で,原核生物と真核生物とでは,遺伝子の構造はかなり異なり,互いに交
換してもそのままでは発現しないのが普通です。細胞の基本構造も原核生物と真核生物では大きく異なります。ヒトのように多細胞体として始めて生物個体とし
て成り立つ生物もあります。
個体や細胞の構造や遺伝子などの構造における違いがあっても,私たちは,どんな生物でも生物として認識します。これには,ヒトの認識のしくみが関係してい
るという心理学の研究もありますが,ここではこれを事実と認めることにします。
遺伝子などについ注目してしまいがちですが,なまの生物を見ているとさまざまなことに気づきます。
ここでは,研究室で扱っているいくつかの例を挙げます。
ヘテロシスト形成のパターンがなぜ出来るのか
クラミドモナスの生物対流の縞模様パターンがなぜできるのか
コケの原糸体の葉緑体数がどのようにして維持されているのか
遺伝子に関していうと,個々の生物種を超えたところで進化の法則があります。
ゲノム進化における遺伝子の大域的距離関係の解析
どうも,これらを見渡すと,パターンの形成が共通項のように見えます。
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更新日:December 24, 2008.
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