めぐりめぐむ生命(その4)
回転運動
多細胞体となるとだいぶ複雑である。血液循環などは「めぐる」という概
念には合っているようだが,脳の働きで筋肉を動かすことなどは,指令が一方通行に
なっているようにも思える。細胞増殖因子などのシグナルの受容と伝達も,一見したところサイクルではない。これら情報伝達は,教科書の図式では一本線の流
れのように表されているが,よく考えれば,生体調節はすべてフィードバックがあるので,一方的にシグナルが流れるということにはならない。筋肉の収縮は感
覚神経からのフィードバックにより適切な強さで行われている。知覚をもたない昔のロボットにはコップが握れなかったのである。
「めぐる」運動の例として,べん毛運動がある。細菌のべん毛は文字通りモーターのように付け根の部分が回転している。べん毛
をもつ真核生物の場合は,べん毛自体が回転しているわけではないが,べん毛のむち打ち運動がサイクルを成している。クラミドモナスという緑藻細胞は二本の
べん毛を巧みに使って自分自身旋回しながら泳いでいる(下の図左)。旋回運動は植物にも広く見られ,アサガオのつるが巻きつくのに限らず,茎の先端は旋回
しながら成長
している。分子レベルでいえば,細菌やオルガネラのATP合成酵素は軸が回転することによりATPの合成を行う(下の図右)。
純然たる回転運動を行う分子複合体は,細
菌べん毛とATP合成酵素くらいだろうか。
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Last update: April 3, 2009
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