めぐりめぐむ生命(その6)
ミ
クロからマクロまで
ここまでの話は全体の話のごく一部に過ぎない。
ミクロからマクロまで,生命世界はめぐるサイクルに満ちあふれている。
それどころか,生命世界は宇宙ともつながって,大きなサイクルを作っている。
次の図を見てみよう。
そもそも生命が成り立つのは太陽の光のおかげであるが,太陽が光り輝くのは宇宙の膨張の過程で星間物質が渦をつくり自らの重力で集まって恒星ができたから
である。銀河系も巨大な渦であるし,宇宙自体も渦巻きをなしているらしい。太陽系も公転しているし,地球も自転している。すべてまわっていることに意味が
ある。
だから生命が成り立つのは,ひとえに宇宙の膨張のおかげである。
生命のサイクルは,細胞内での代謝や複製などのサイクルに始まり,細胞周期の制御により細胞のレベルになる。さらに多細胞生物体の統御のためにさまざまな
サイクルが働いている。血液や体温の恒常性を保つための仕組みは教科書に詳しく書かれている。また,多細胞体ではなくても細胞がたくさん集まると,全体と
して超細胞構造を作ることがある。生物対流などがそれである。おそらく多細胞体の最初はこうした細胞の集合体から始まったに違いない。
人間についていうならば,サイクルはいくらでもある。脳の活動も定常的なサイクルがうまくできることによって成り立つ。さらに大きなスケールでは,ライフ
サイクル,世代間の知識の伝達(教育や文化)などである。また,社会そのものも人間集団が作る大きなサイクルである。そのなかで動くお金やもの,つまり,
流通や経済も大きなサイクルである。こうした人間活動も含みながら,地球上の生態系や物質循環が成り立っている。さらに諸生物の発展や衰退を繰りかえすサ
イクルによって生命の進化が実現されている。こうした生命活動全体として,インプットである太陽の光を熱の形で宇宙に返していることになる。
こうしたサイズも規模も時間的スケールもさまざまに異なるサイクルは,それでいて互いに密接に関係し,互いに他を駆動している。サイクルがたくさんあって
お互いに絡み合っているとき,何がおきるのだろうか。それこそが生きているということである。
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Last update: May 11, 2009
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